大人のための童話 第1巻

大人のための童話 第1巻

$12.99

私たちが抱える傷、忘れられない人々、そして歩み続けるためのささやかな優しさを描いた、12の静かな物語。

声を上げられない傷がある。

それは、古い引き出しに。窓を叩く雨音に。ふいに砂嵐へと変わるラジオに。かつて誰かが愛したパンを入れた紙袋に。 何度結び直してもほどけてしまう靴紐に。そして、何年も胸の奥に残り続ける"あの名前"に――。

本書は、喪失の淵に立ちながらも、思いがけないかたちで「自分は一人ではない」と気づいていく人々を描いた、 全12編の文学短編集です。

  • 必死に生きる父親が、あまりにも早く「待つこと」を覚えてしまった子どもを家に迎え入れる。
  • 古いラジオを修理する元刑事が、決して終わらなかった事件と再び向き合うことになる。
  • 双子星が寄り添って輝く夜空の下、別れの痛みに直面する姉妹。
  • 新郎新婦の過去を何も知らないまま婚礼衣装を仕立てるお針子が、忘れられない人と巡り会う。
  • 帰らない人を何年も待ち続けた女性が、「手放すこと」は「忘れること」ではないと知る。
  • 慣れ親しんだすべてを手放し、故郷の音だけを胸に旅立つ若い女性。
  • 線路の終着点で出会った二人の見知らぬ者。人生の終わりだと思い詰めていた彼らが、"記憶し続ける理由"を見出していく。
  • 嘆き悲しむことを仕事にする「泣き女」が、他人の死を悼むことを生業にする意味を問い直す。
  • 小さなラジオ店で、砂嵐のようなノイズが、ただの雑音ではなく「ともに耐え抜く冬の音」として響きはじめる。
  • ……ほか。

ここに登場するのは、ヒーローではありません。

疲れ果てた人々。怯えている人々。過ちを犯し、逃げ出し、沈黙し、執着しすぎ、 あるいは「すべてを自分一人で背負わなければならない」と思い込んでいた、ごく普通の人々です。

けれど彼らは、同時にこんな人々でもあります。

  • 誰かのほどけた靴紐を、そっと結び直す人。
  • 明かりを消さずに残しておく人。
  • 古い手紙を大切にしまっておく人。
  • もう自分では買う気力を失くした誰かのために、パンを買って帰る人。
  • 誰かの呼吸が穏やかになるまで、ただ静かに隣に座っていられる人。

静謐な筆致と深い人間愛で紡がれるこの12の物語は、 悲嘆、家族、罪悪感、記憶、許し、孤独、そして「もう一度歩き出す可能性」を描き出します。

心揺さぶる文学作品、親密な人間ドラマ、ほろ苦い結末、そして平凡な日常に宿る静かな美しさを愛する読者へ。 本書は、同じひとつの繊細な真実へと向かう、12の旅路をお届けします。

「癒しとは、過去を消し去ることではない。
過去に寄り添い、共に生きていく術を学ぶことなのだ。」

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